震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震で、15日午後1時過ぎ、宮城県栗原市の温泉旅館倒壊現場から女性2人と男性1人が死亡しているのが見つかった。地震による死者は計9人、行方不明者は計13人、負傷者は200人超となった。また地震発生当時、震源地に近い栗駒山に向かっていた観光バスが、崩壊した道路の数メートル前で急停車し、転落の大惨事から免れていたことがこの日、分かった。バスの乗客は「ちょっとタイミングが違えばみんな死んでいた」と証言した。
突然目の前の道路がえぐられ、あわや谷底に転落の大惨事―。震源地に近い栗駒山に向かった観光バスは崩壊した道路の手前で運良く急停車。九死に一生を得た運転手や乗客は「数メートル先は道がえぐられ、消えていた。あとちょっとタイミングが違っていれば、みんな落ちて死んでいた」と恐怖の瞬間を口にした。
高山植物を見る日帰りツアーの乗客33人を乗せたバスは、14日午前9時前、ゆっくりと山道を走行。登山口の10キロほど手前の上りのカーブで、いきなり下から突き上げる衝撃を受けた。
バスを運転していた早川留雄さん(52)は背中が反るほど必死で急ブレーキを掛けたが「見る見るうちに目の前の道路が崩れていった」。友人らとツアーに参加した群馬県みどり市の石川たま子さん(60)は「突風が吹いたのかと思った」と振り返った。バスが跳ね上がりバウンドしながら走っているように感じたという。
停車して降りると道路の亀裂はバスの前輪まで達していた。わずか5メートル先の道路はえぐられ、ほとんど消滅。バスが急停車していなかったら谷底だった。
徒歩で山道を戻ろうとすると下から歩いてきた人が「下も道がないよ」。孤立したことが分かり「わあ」と大声を出す人もいた。断続的な雨と余震。石川さんは「ここで野宿かな」と覚悟したという。ヘリに無事救出されたのは夕方だった。石川さんは「生きてるだけで運がよかったと思わなくちゃ…」とつぶやいた。
一方で、地震発生から約28時間後、倒壊した栗原市の温泉旅館「駒の湯温泉」から3人の遺体が発見された。宮城県警によると、3人は旅館経営者家族の菅原チカ子さん(80)、宿泊していた観光コンサルタント・麦屋弥生さん(48)=金沢市=、鉄道博物館学芸員・岸由一郎さん(35)=東京都北区=と確認された。
2階建ての旅館は数十メートル押し流され、180度回転していた。「遺体は土砂に半分埋まった状態で周囲の土砂を掘り出すのに時間がかかった」と暗い表情で話す自衛隊員。建物周囲のぬかるみがひどく重機が使えないため、隊員らは畳や近くから切り出した木の枝を敷いて即席の足場を設置。ひざまで泥水に漬かりながらスコップで溝を掘り、20メートル大の水たまりから水をかき出した。隊員らは泥だらけで疲労こんぱい。休憩時間に入ったとたん木陰に横たわる姿もみられた。
◆女将の死悼む ○…チカ子さんの夫の孝さん(86)は、14日の倒壊を間一髪で逃れており、明暗を分けたおしどり夫婦に、友人らは言葉を失った。「何十年も続く親しみやすい古い宿」(近所の主婦)という旅館は菅原さん夫婦ら一族で切り盛りしてきた。現場では長男の孝夫さん(58)と従業員3人がまだ建物の下敷きになっている。行方不明の従業員・佐藤幸雄さん(62)の義理の兄大内斉さん(75)は「奥さんは本当に人柄が素晴らしい。足が弱くなっていたが、仕事を頑張っていて2人は本当におしどり夫婦だったのに…」と、チカ子さんの死を悼んだ。
参照元:スポーツ報知