◆北京五輪 レスリング女子 フリースタイル63キロ級決勝(17日・中国農大体育館) レスリング女子63キロ級で、アテネ五輪金メダルの伊調馨(24)=綜合警備保障=が連覇を飾った。準決勝は苦戦の末にダグレニアー(カナダ)を撃破。決勝では今年の欧州女王カルタショワ(ロシア)を判定で下し、前日の48キロ級で銀メダルだった姉・千春(26)=綜合警備保障=の無念を晴らした。今後は、米国へのレスリング留学を視野に入れていることも明らかになった。
両手で顔を覆った。2人分の思いが涙になって流れ出た。激戦となったカルタショワとの決勝を際どく判定で制し、姉妹の北京ロードが完結。「うれしいの一言。千春が『金メダルを取ってこい』と言ってくれたので」涙で抱き合った姉に送り出されて表彰式は一転笑顔になり、エクボをつくって宝物にキスした。
危なかった。2、3回戦こそ連続フォール勝ちで突破したが、準決勝のダグレニアー戦は「今までの人生にない」という大苦戦。右足を取られてバックを奪われた痛恨の失点から終了間際に寝技でポイントを取り返し並び、「ラストポイント」のルールで命拾いした。
しばらく立ち上がれず、マットを下りる足がフラつくほどの消耗戦。決勝もまた、右ひざ外側じん帯を痛めて満身創痍(い)だった。「最後は千春が体を動かしてくれた」前日の48キロ級で姉が銀メダルに終わり、姉妹Vの夢が消滅。「戦う意味がない」と意気消沈する馨に夜、千春からメールが届いた。「金メダルを取ってこい」食事ものどを通らず、眠れず、朝には吐いたのに、この一言が土壇場の劣勢をはね返す力になった。「レスリングは0点だけど気持ちは100点だった」
ストイックに戦った姉と、マイペースでのんびり屋の妹。互いに支え合った4年間を振り返り「千春がいたから私も頑張れた。たとえ1個でも2人でつかんだ金メダル」とその価値を自らたたえた。
世界選手権5連覇。五輪も連覇した。満足感はある。「千春が一区切りというなら、私も一区切りかな」とW引退をほのめかした。だが、さらなる進化を求める自分がいるのも確かだ。続けるなら“独り立ち”しなければならない。もう一つの選択肢は海外留学。「所属先と相談しなければならないけどアメリカに行きたい」と明かした。
日本流で世界最強に上り詰めたが、03年11月に米国チームの練習に参加した際、個々に合わせて長所を伸ばす環境に触れ、新技習得や欧米選手への対応などに刺激を受けた。英会話上達への意欲も強い。
「また自分の気持ちを奮い立たせることができればやるけど、今は家族とゆっくりしたい」と話した日本の至宝。海を渡る決意をしたとき、日本女子史上初となるV3へのスタートが切られる。
◆伊調 馨(いちょう・かおり)1984年6月13日、青森・八戸市生まれ。24歳。綜合警備保障所属。中京女大付高―中京女大出。レスリングは3歳から八戸クラブで。02年世界選手権で初出場初V。以来、07年まで5連覇中。04年アテネ五輪を含め6年連続世界女王。07年5月のアジア選手権は故障で1回戦不戦敗、4年2か月ぶりの黒星を喫した。166センチ。家族は両親と兄、姉。
参照元:スポーツ報知